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それはMOVEセミナーから始まった
by 山崎 雅幸 (株)シーズ
2000年の8月に開催されたMOVEセミナーのデモンストレイターとして参加してもらった古賀大祐君。その勢いで、せっかくだから実践してみようとやってみたことをご紹介します。
★
「家族のお出かけの帰りに、ファミレスに気軽に立ち寄りたい。」
家族総出の行楽帰り、これから家に帰って食事の用意はめんどうだ、しかし中学生になって大きくなった大ちゃんを横目にちらりと見やり、「やっぱ、弁当にするか」といつも通り過ぎるファミレスであった。大ちゃん一家の希望は、「寄りたいときに、ファミリーレストランに寄る」というささやかなものであった。
★どうして気軽にファミレスに寄れないの?
駐車場から食事ができるまでを考えると、躊躇してしまう。
重たい車椅子を降ろして、座位保持要素をセットして、本人を抱え降ろして、運良くスロープがあっても車椅子のまま食事が難しいので座敷がないと、それから。
確かにお弁当の方が無難に思えてきた。が、ここで考え直して、「じゃあお母さん、どうすればもっと気軽にやれると思う?」と聞いてみた。まず「軽い車椅子に座れること、車椅子で食事ができること、もっと言えば普通のいすに座れるとずいぶん違う」という答え。いつも思うのだが障害児の親、特に母親は質問に対して現実的な答えを必ず返してくれる。
★つまりヘッドレストなし、座位保持最小のいすに座れればいいのだな!!
ファミリーレストランで食事するという活動をゴールにして、さて課題を分析してみた。
さしあたって移乗に関しては目をつぶって、食事するのに最低必要な「30分程度補助を受けずに普通にいすに座っていること」が課題になりそうだ。
そのころの彼は、マイルストーンテストでいうところのA.6(必要に応じて胴や股関節、足に補助を受けて最低30分間痛みを感じずに背をきちんと伸ばして座っていることができる)の状態であった。
具体的にいえば、ヘッドレストがあって、リクライニングしている背もたれのいすしか座れないのが、車椅子を重たくしている原因である。「ヘッドレストなし、座位保持要素を極力少なくしたいすに座ってみよう!」。話は簡単だけれど、単純ではなかった。みんなから「ヘッドレストを取るなんて無理だよ?」の声。これはもうやって見せるしかない。でも大ちゃんとは10年の付き合い、簡単なモジュラータイプのいすから、バケット型のモジュラー、採型のバケットのいすと、だんだん補助が増えていった歴史を身をもって知っている。MOVEセミナーを受けたからって、今さら補助を減らすなんて?。今だから白状しますが、私も半信半疑だったのです。
MOVEプログラムに沿って作ったシンプルないすに、テキストどおりの「機能的座位」をとってもらう日がきました。
★あれ!結構じょうずに座っちゃった。
背もたれ、
座面を採型し、ヘッドレストをつけた座位保持装置で何とか頭が上がっているという評価だった大ちゃんなのに、テーブルに手を置き、屈曲のための補助と胴上部での補助を受けているとはいえ、ヘッドレストなしのいすに上手に頭を上げて座るではありませんか。正直言って、まず頭に浮かんだ言葉が「なんで?!?」次に浮かんだのが、「このいすに座れるのであれば、車椅子だけでなく、便器いす、シャワーチェアー、簡単な外出用のいすなど、普段から相談を受けていながら、コストや重量などで折り合いがつかないさまざまな道具が以外に簡単に作れるのではないか」ということだった。
「あれぇ、あれぇ」といってる間に2、30分ほど顔を上げている大ちゃんは終始笑顔である。(新しい座位保持の仮合わせのたびに、イヤーな顔してたくせに)
さっそく学校でこのいすを使ってもらえないだろうかと、その場で作戦会議、その前にドクターにも相談に行かねば、etc。
ドクターからのアドバイスは、「股関節の脱臼と左右差に対して、対応した座面を簡単に作ること」で基本的に賛成してくれた。すかさず、今回作る車椅子もヘッドレストをとる試みをやっていいかとたずねてみる。実際テーブルと体幹のサポートをつけ、まだ上手ではないヘッドアップを見てもらったが、もともとがヘッドレストも取り付けるし、リクライニング機能もついた車椅子なので、時間を設定する、学校での練習も同時におこなうなどの条件付きで賛成してくれた。
★
学校にいすを持ち込んで使ってもらおう
やはり、起きている時間の35%以上を過ごすことになる学校で使ってこそ身につくというもの。(その時名前はまだなかったので、とりあえずMOVEのいすと呼ぼう)MOVEのいすを授業に使ってほしいと持参する。やはり論より証拠、座って見せると納得し、使ってくれるとのこと。ちょっと悪のりして、腰ベルトと胸ベルトだけで、MOVEのいすに座ってみた。だって目標はここなんだから。そしたら3秒ほど座れた!「すごい!」とみんな思ったのです。でもMOVEを知る前は、3秒しか座れないからダメだって言ってたのに・・・。まあいいか・・・。
★
それから半年
お母さんの話によると、担任の先生をはじめ、学校の皆さんが、授業のなかに上手にいすを取り入れてくれたようで、すでに大ちゃんのリクライニング式座位保持装置(PW)からヘッドレストはなくなってしまった。それどころか、胸ベルトと腰ベルトだけでMOVEのいすに10分程度座ることを習得して(じっと座っているのではなく、まだ頭は上がったり下がったりですが)、A.6からA.5へと座位を保つ力は向上し、A.4へ迫ろうとしている。変わったのは大ちゃんだけど、それ以上に周りをも変えたような気がする。まず母親は生活上の希望を口にだすようになって、やはり自分で立ち上がることができて、誰かが支えれば立っていられるなら、介助が楽になって、いろいろ楽しいことが一緒にやれそうだと話してくれる。それに対してセラピストはゲートトレーナーをすすめてくれるし、担任の先生はゲートトレーナーがくるまで後ろから抱えて、歩かせてくれている。
なによりも、大祐を見てみんなが「かっこいい!!」って言ってくれるのが嬉しかった。首回りは太くなって、顔もりりしくなったと思います。こうお母さんがコメントしてくれました。
★生活の道具って何だ?
わたしは「生活」の道具を作りつづけてきたつもりなのに、現実には、座る、立つ、歩くという、生活の中から切り取った動作の補助具を作ってきたのだと思います。「生活」とは何か。深く考えることなくここまで来たのですが、MOVEと出会った今は考えざるをえません。ここで思い出されるのが、アメリカのIL運動のスローガンです。「ADLからQOLへ」
訓練や学習によって得るものが、生活動作の習得だけではなく、生活の質の向上でなければ意味がない。こう読み直すと、このスローガンが何を言いたいのかよくわかった気がします。上手にいすに座れたことより、「かっこいい!!」っていわれたことのほうがずーっといいことだと思うのです。
では豊かな生活とは?このイメージがあるとMOVEプログラムは成功したのも同じ気がしますし、もしかしたら、豊かな生活のイメージづくりのためにMOVEプログラムがあるのかもしれないと思うこの頃です。
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